カールの曲がった地平線

都内在住31歳の独身サラリーマンが、日々木工や読書、散歩などを楽しみつつ、いつか脱サラして小屋暮らしや旅暮らしをすることを夢見るブログ

『ロビンソン・クルーソー(上)(岩波文庫)/デフォー著、平井正穂訳』を読みました

ロビンソン・クルーソーといえば

ロビンソン・クルーソー 上 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー 上 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソーといえば、航海のさ中に船が難破して、奇跡的に絶海の孤島に漂着して、その島で何年もサバイバル生活をして生き残り、やがて祖国に帰還して億万長者となった男の話ですよね。


「サバイバル」というキーワードが脳裏に引っかかったのか、積ん読していたのをなんとなく引っ張り出して読み始めると結構面白くて、最後まで読んでしまいました。


主人公が遭遇する様々な状況や、次々と生じる問題にはとてもリアリティがあります。そして、ロビンソンがこれらに対して、絶望や恐怖に苛まれながらも、知恵を働かせて粘り強く向き合い、活路を見出そうとする有様に思わず引き込まれてしまいます。正直、こども向けの本だとばかり思っていたのですが、リアルな問題から引き出される人生教訓が多く含まれているというのが率直な印象です。

あらすじ~これだけで大体分かるロビンソン・クルーソー

  1. 放埓な主人公は中流階級に属しているが、一攫千金を夢見るがために安定した生活を放棄して、父の忠告を無視して航海に出た。様々な出来事の後、外国にたどり着いてある事業を始めた。事業はそこそこ成功したが、航海への憧れを抑えきれなくなり再び出発した。
  2. 主人公の乗った船は嵐で難破して絶海の孤島に漂着した。生存者は彼一人だった。主人公は難破船が消えてしまう前に、船内からいち早く食料や物資、道具などを運び出した。島の高台に穴を掘り住居を構えた。
  3. 主人公は島内を探検して狩猟によって肉を得ていたが、火薬が尽きることを心配し、山羊を飼いならしてバターやチーズを作った。また、僅かな種から大麦と米を栽培することに成功した。
  4. こうして生活が安定すると、徹底的に島内を調べるために大規模な探検を計画した。小舟を工作し島を半周もしたがこれは無駄に終わった。
  5. 主人公はある日島内に何者かの足跡を発見した。敵ではないかと恐れてしばらくの間隠遁生活をした。実はこの島には、近くの島に住む野蛮人が船で時々きては、捕虜を殺害する儀式を行っていることが分かった。主人公は捕虜の一人を助けて従僕にすることに成功した。主人公は従僕に生活の知恵やキリスト教の教えを教えて楽しく暮らし、数年が経った。
  6. 主人公の住む島に航海船の船員たちが偶然にもやってきた。航海船内で内乱が起きたために、排斥された船員たちが仕方なく島にやってきたというわけだった。主人公は船員たちと協力して航海船の中の内乱者をやっつけて内乱を解決した。その船で西洋へと帰還した。
  7. 帰国してから、かつて外国で始めた事業がどうなったか調べると、それは大事業となっていて莫大な富を生んでいた。所要の手続きを踏んで財産を手に入れて主人公は億万長者となった。

読書感想

ロビンソン・クルーソーは頭がいいし忍耐がある

ロビンソン・クルーソーの行動で興味深いことは多かったです。例えば、

  • 座礁した船が消えてしまう前に、船内の物資を何日もかけて一生懸命に陸へと運び出すのですが、物資だけでなく最後には船体をも分解して材料として島へ持ち帰ってしまう。
  • 行動を起こす際あるいは反省する際などに、「よい点/わるい点」を挙げて検討を行っている。(特に面白いのは、無人島に漂着したことについて良し悪しを列挙して、トータルでは無人島に漂着した方がプラスだと考えている)。また、いちいち数字を使って説明していて、例えば蛮人との乱闘が済んだ後に死亡者を死因と殺害者ごとに分けて数えている。合理的な思考をする人だという印象。
  • わずかに手に入れた麦や米を蒔くのだが、はじめは天候のために枯らしてしまう。しかし、天候が悪くなる可能性を咄嗟に思いついて蒔いたのは半分にしておいたこと。初めの失敗の後では、1年間もの間天候をきちんと観察して、それから次の栽培を計画していること。
  • 住居や道具などを作るときにとても忍耐強く取り組んでいること。例えば、木から薄い板を切り出すために、丸太の両側を少しずつ削り取っていき、数ヶ月もかかって板を切り出している。別の場面では、木から舟を作る(掘る)までに2年もの時間を費やしている。(初めに作った舟は完成した後で、大きすぎて海まで運べないことが分かった)。

など。主人公の思考方法や知恵などは生活の上で参考になりそうです。

ロビンソン・クルーソーはだんだんキリスト教にハマっていった

個人的に面白いと思ったのは、主人公が徐々にキリスト教に対して敬虔になっていったことです。冒頭では放埓な生活をおくり、キリスト教の教えに心から賛同したことがなかった主人公ですが、孤島での生活が進むにつれて徐々にキリスト教を心のより所としていきます。


さらに、従僕を得てからは熱心に教義を教えます。従僕のキリスト教に対する素朴な疑問に悪戦苦戦しながら答えようとすることで、聖書の教えを突き詰めて考えるようになっていきます。僕は宗教はあまり興味ないのですが、ロビンソン・クルーソーのこの変貌には驚いてしまいました。