カールの曲がった地平線

都内在住31歳の独身サラリーマンが、日々木工や読書、散歩などを楽しみつつ、いつか脱サラして小屋暮らしや旅暮らしをすることを夢見るブログ

戦争について~パレスチナとイスラエル

2023年10月7日、パレスチナの支配勢力ハマスイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けて武力衝突が勃発した。ハマスイスラエルの都市にロケット弾を撃ち込み、多数のイスラエル民間人を殺傷・拉致した。これに対してイスラエルはガザの北部から南部へと激しい空爆と市街戦を展開している。一時は人質の一部解放や数日間の停戦などが実現し、事態が幾分改善に向かうに思われた場面もあったが、現在でもイスラエルハマス(もはやパレスチナ?)殲滅の方針を堅持しており、激しい戦闘を続けている。

 

ロシアのウクライナ侵略に加えてガザで紛争までも起こり、テレビで日常的に戦況を耳目にするにつれて、戦争が身近に感じられる時世になった。僕としても思うところを書いておきたい。誤りや認識違いも多いと思う。もとより専門家でも何でもない者の拙論だが、書くことが重要だ。もし専門家などがいるのであれば戦争などとっくに終結しているのではないだろうか。

 

【見出し】

 

戦争が起こる理由

戦争はなぜ起こるのだろうか。

 

まず、自己拡張や新たな権益獲得の欲望によって生じるものがある。例えば、今も続くロシアのウクライナ侵略があるし、18~20世紀の西洋列強の植民地支配が挙げられる。太平洋戦争にもそうした側面がある。アメリカのインディアン征服、メキシコやフィリピンとの戦争。中国の東シナ海南シナ海への拡張意欲など。

 

自衛の戦争。例えば、ロシアの南下を阻止した日露戦争

 

奪われたものの回復、怨恨の連鎖によるもの。今度のハマスイスラエルの戦争がこれにあたると考える。少し長くなるので次節に書く。

 

相手勢力の抑制を狙うもの。ガザ紛争の歴史を繙くと、オスマン帝国の弱体化と石油資源の獲得を目論んで、イギリスが帝国内騒乱を誘導した側面もある。

 

ガザ紛争の歴史的経緯

1922年に滅亡したオスマン帝国は、古来より多民族共生型の国であり、アラブ人とユダヤ人も平和に共存していた。西洋の数千年にわたってユダヤ人を迫害した歴史を思えば、オスマン帝国ユダヤ人に対して優しい国だった。

 

そこにイギリスが石油資源欲しさにオスマン帝国内に騒乱を醸成した。アラブ人とユダヤ人の双方に対して単一民族国家の樹立を約束する二枚舌を使い、双方の敵対心を煽り戦わせたのだ。

 

第二次大戦が終わると国際連合イスラエルの建国を承認。一方、アラブ人国家の建国の約束は反故にされた。思うに、ドイツのユダヤホロコーストを始め、数千年にわたる西洋のユダヤ人迫害を行ってきた西洋の、ユダヤ人への罪滅ぼしだったのではないだろうか。アラブ人は自らが永年暮らしてきた土地に続々とユダヤ人がやって来てわがもの顔するのを当然不愉快に思い、憎悪が高まっていった。

 

イスラエル建国を皮切りにヨーロッパからユダヤ人が続々移住。元々西洋で大資産家だったユダヤ人なども移住してきた。いったいユダヤ人は富や権利に強かなところがあり、アラブ人から土地を巻き上げいき、アラブ人は徐々に辺境に追いやられていった。なお、こうしたやり方は、アメリカ新大陸でインディアンから土地を「合法的に」巻き上げた開拓民の手口にも類似したものがあると思う。

 

「自国内」で徐々にプレゼンスを高めていくユダヤ人に対するアラブ人の反感が高まる。アラブ人が武力蜂起するが、イスラエルの反撃にあい、かえって領土を奪われて隅に追いやられていった。イスラエルの背後には強大なアメリカ始め西洋諸国が味方にいるのだから当然の成り行きだ。

 

そうして隅に追いやられ、イスラエルによってテロ防止を名目に壁で包囲されて、現在のガザ地区が出来上がった。アラブ人は「この世の棺桶」と形容される劣悪な環境に閉じ込められてしまった。

 

終わらない憎悪の連鎖

こうしてガザ紛争の歴史を振り返ってみると、「憎悪」や「奪われたものの回復」といった要素が強く絡んでいる。そして、一方の主体の憎悪や喪失回復への欲求が向かう先の主体には、また別の憎悪や喪失回復への欲求があり、これらが止めどなく連鎖している。そのため、戦争の原因といったときにそれが一体何なのか、そしてどちらが(誰が)悪いかを断定することは非常に難しい。

 

過去度々ガザの武装勢力イスラエルを攻撃してきた背景には、ユダヤ人に自分たちの土地を奪われたアラブ人の憎悪がある。その一方で、ユダヤ人がアラブ人を排除する背景には、聖書に記されて数千年ぶりに国土を回復したユダヤ人の悲願や(正直、2000年前の真偽も分からない文書を根拠にされても、という気がする。)、ドイツによるホロコースト、ひいては数千年にわたりヨーロッパで迫害されてきた怨恨がある。そこに、アラブ・ユダヤ双方との建国を約束したイギリスの悪意が絡んでいるし、イスラエル一方のみの建国を承認し、パレスチナを軽んじた国連の責任もある。

 

このような中で、誰が悪いのかを言うことはもはや難しい。イギリスの二枚舌外交や、ヨーロッパにおけるユダヤ迫害については、悪いには違いないだろう。しかし、責任の取り様もない。

 

戦争を起こさないためには

戦争を回避するにはどうしたらよいだろうか。上で戦争の起こる背景をいくつか挙げたわけなので、その防止が戦争回避につながるのだと、論理的には一応言える。しかし実際はどうだろう。

 

自己拡張の意欲を持たなければよい。しかしそうは言っても現実には、拡張意欲に燃える国々が存在している。ロシアや中国の場合には、領土拡張欲であるのにも関わらず「歴史的には自国領だった」などと主張している。このように、拡張欲であるかどうかは証明が難しい。また、国連も機能していないため、拡張欲を防止するパワーが世界に事実上存在しない。

 

また、「奪われたものを回復」をせず「憎悪」を持たなければ、戦争を食い止められるが、侵略された方が割りを食うのはやはりおかしい。侵略に対する反撃は民族としての尊厳を維持・回復しようとする活動であり、反撃しないとその民族は消滅してしまうので、反撃することには充分意義がある。

 

自衛の戦争についても同様であり、侵略を黙認したら自らは絶滅してしまう。

 

他の勢力同士を戦わせるように仕向けない。これも防ぐことは難しいでしょう。

 

最後に

卑近な話で、会社や学校の人間関係においてさえも憎悪や喧嘩を完全にはなくならないのだから、戦争自体を無くすことは不可能だろう。そこで、勃発した時にいかに食い止めるかが重要になる。

 

こちらからは戦争を仕掛けない、挑発などもしないよう決意すること。他方で、向こうから戦争を仕掛けられたときにはきちんと守り抜けるように準備しておくこと。

 

そのためには、産業・学術・軍事・文化といった国力を高め、悪意を持つ他国に侵略する気を起させないようにする必要がある。

 

同時に、多くの国々との信頼関係を構築し、紛争が生じたときにこちらを理解してもらえるような関係作りが大切だろう。ガザ紛争では、イスラエルが西洋諸国から正当な国家として扱われる一方で、パレスチナの人々は西洋に理解されず世界から孤立してしまった。そのため、話合いではもはや何も解決せず、武力行使しか解決の方法がない状況に追いつめてしまった。

 

平和で未来に希望が持てる世の中の到来を心から祈っています。

 

参考文献

1.『近代イスラームの挑戦(世界の歴史20)』山内昌之著、中央公論社

2.映像の世紀バタフライエフェクト「砂漠の英雄と百年の悲劇」

www.nhk.jp

3.『アメリカの国民性』、和辻哲郎