カールの曲がった地平線

都内在住31歳の独身サラリーマンが、日々木工や読書、散歩などを楽しみつつ、いつか脱サラして小屋暮らしや旅暮らしをすることを夢見るブログ

東京散歩~六義園、巣鴨地蔵通り商店街、染井霊園~

2016/6/5(日)晴れ


今回は駒込巣鴨を散策しました。東京に住んで6年になりますが、この地に降り立ったのはこれが初めてだったかもしれません。一昔前の面影を残している、懐かしさを感じる街でした。


そういえば、祖母は、東京の空襲で地方へ避難する前には、この辺りに住んでいたと言っていたような気がします。なので自分にとって多少関係があるかなと思い、前々から気になってはいたんです。

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さて、JR駒込駅にやってきました。ここから散策が始まります。

六義園

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駅から徒歩5分程で六義園の染井門が見えてきました。
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染井門からは入園できないので、右手に六義園をみながら正門まで歩きます。背の高いレンガの塀の間に正門がありました。


六義園は、徳川5代将軍・綱吉の時代に、側近の柳沢吉保が7年もの歳月をかけて造り上げた庭園です。紀貫之古今和歌集の序文に記した和歌の六つの基調(六義)を、庭園として再現したものであるため、六義園という名称となったとのことです。
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入口に傘がありました。
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入口近くの桜の巨木。迫力があります。
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庭園の中央には池があり、この池の周りを縫うようにして散歩道が整備されています。ツツジの鮮やかなえんじ色が美しい季節です。
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石橋を渡る観光客
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うっそうと茂る林の中へ
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奥には何やら古めかしい建物がありました。面白いことに柱と梁がツツジの木を使って作られており、「つつじ茶屋」といわれます。ツツジというと、街路脇の生垣が思い浮かぶので、こんなにも枝が太くなるのかと驚きました。
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明治維新後、六義園を所有した岩崎家によって建てられた建物の一つだそうです。岩崎家は他にも建物を建造しましたが、皆焼失してしまったとのことです。
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こちらは滝見茶屋。茶屋のすぐ傍を水がさらさらと流れており、ゆったりとた気分でお茶が飲めそうです。
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白、青、赤、紫…この季節はアジサイが本当にきれいです。

六義園を後にして巣鴨

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六義園の正門を出て、六義園の壁沿いに歩いてJR巣鴨駅まできました。徒歩15分くらいでした。
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巣鴨駅前の商店街

真性寺

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そしてやってきたのは真性寺。江戸六地蔵のうちの一つである、高さ2、3メートルの菩薩像があります。江戸六地蔵とは、江戸の出入り口である主要六街道に建立された地蔵菩薩像だそうです。

巣鴨地蔵通商店街

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真性寺の前から「おばあちゃんの原宿」として知られる巣鴨地蔵通商店街が始まります。商店街には古くからの商店が多く、中には江戸時代からの老舗もあり、多くの人でにぎわっていました。
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すがもんのおしり。なんだか分からないけど、優しくなでたらなんだかいいことが起きそうです。フワフワしてました。
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商店街を進むと、とげぬき地蔵本堂入口が見えてきます。とげぬき地蔵は、誤って針を飲み込んだ女中に、本尊を描いた紙を飲ませたところ無事に針が出てきたという逸話から、無病息災の地蔵として信仰されてきました。
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地蔵には長蛇の列ができており、参拝者が次々と地蔵に水をかけて洗ってはタオルで優しく拭いていました。
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松月堂の塩大福を食べながら、商店街を往復しました。
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派手な赤パンツのお店「マルジ」。
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食料品店「信濃屋」
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おいもやさん「興伸」

染井霊園

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商店街をとげぬき地蔵で折れて、白山通を横断したところに、染井霊園があります。ここには、岡倉天心高村光太郎二葉亭四迷木戸孝允などの著名人が眠っています。
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染井霊園を後にし、そこから5分ほど歩いた場所にある慈眼寺へ。ここには芥川龍之介の墓があります。


形の様々な墓石が並ぶ迷路のような霊園を、偉人の墓を探しながら歩く時の胸の高鳴りと、手を合わせるときの安寧。霊園は、少し寂しいけれど、なぜか落ち着きます。


慈眼寺を出て、朝日通り商店街を歩いて妙行寺にやってきました。「商店街」とは言うけれども、お店が全然なくて、狐につままれたみたいにかえって楽しくなってしまった。
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妙行寺は四谷怪談のお岩さんの墓があるということで寄ったのですが、着くのが遅かったため、閉まっていました。
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日が暮れてきました。妙行寺の近く、都電荒川線の庚申塚駅(こうしんづか)から乗車して池袋へ向かいました。寂しさの埋め合わせをするべく、賑やかな夜の繁華街へ。

(終)

お散歩マップ

今回の散策のルートを作成してみました。
drive.google.com

参考文献

「東京の散歩道」日地出版

東京の散歩道 1989年改訂新版 (Atlas Guide 地図の本 51)

東京の散歩道 1989年改訂新版 (Atlas Guide 地図の本 51)

木でベッドを作る~その4~(たわみの式の導出続き)

前回に引き続きたわみの式を導出します。
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さて、前回までに以下のことが分かったのでした。

前回のまとめ

xを横軸、yを縦軸として、下に張り出すようにたわんだ木材を考えます。木材は、本当は真っ直ぐなのですが、上に重りが載っているためにたわんでいるのです。なお、重りはちょうど中央に載っています。
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この木材の中心線をy=f(x)とすると(図参照)、yは次の微分方程式を満たします。
\frac{d^2y}{dx^2}=\frac{M}{EI}
ここで、

  • Mは、木材において横軸がxである断面に働く力のモーメントです。重りによる木材内部への力のかかり方が、これに反映されることになります。
  • Eは、材質に固有の定数であるヤング係数です。
  • Iは、木材の断面の形状から決まる量です。

微分方程式を解くためにはMおよびIを計算する必要があります。

Iの計算

Iは、I=\int_S{y^2ds}と定義したのでした。ここでSは木材の断面、dsはこの断面上の微小な面です。
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木材の断面は高さh、奥行きwの長方形ですので積分は容易です。
I=w\int_{-\frac{h}{2}}^{\frac{h}{2}}{y^2dy}=\frac{h^3w}{12}

Mの計算

木材には、重りが木材を押す下向きの力P、支柱から受ける上向きの力Fが働きます。この3つの力は釣り合ってますので、F=\frac{P}{2}です(下図参照)。
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さて、ここで横軸がxである地点を境に木材を左右の部分に分けて考えます。左の部分に働く力はどうなるでしょうか(下図参照)。
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左端に、支柱から受ける上向きの力Fが働くことは同じですが、これだけでは力は釣り合いません。だからx地点の断面には下向きの力が働いおり、その大きさはF=\frac{P}{2}です。また、この断面に働くモーメントをMとすると、M=\frac{Px}{2}となります。

微分方程式を解く

以上から、x<\frac{l}{2}の場合に、微分方程式は以下のように具体的に書けます。
\frac{d^2y}{dx^2}=\frac{P}{E}\frac{6}{h^3w}x


上式をxについて積分して、
\frac{dy}{dx}=\frac{P}{E}\frac{6}{h^3w}\frac{x^2}{2}+C_1


ここで、重りが木材の中央に載っているため、たわみは左右対称になるはずなので、x=\frac{l}{2}で上式は0となります。ですから、C_1=-\frac{P}{E}\frac{3}{4h^3w}l^2


さらに積分して、
y=\frac{P}{E}\frac{6}{h^3w}\frac{x^3}{6}+C_1x+C_2


ここで、x=0のときたわみは0なので、(x,y)=(0,0)を上式に代入するとC_2=0が分かります。よって、
たわみy=\frac{P}{E}\frac{1}{h^3w}x^3-\frac{P}{E}\frac{3}{4h^3w}l^2x


となります。たわみは木材の中央で最も大きくなるので、上式でx=\frac{l}{2}とおくことで、
y=-\frac{P}{4E}\frac{l^3}{h^3w}
が得られました(y軸を上向きが正になるようにとっているため、たわんでいるところのy座標はマイナスになる。たわみの大きさとしては、上式の絶対値をとったものを使えばよい)。


なお、重りが木材の中央に載っている場合に限ったので、計算が若干簡単になっています。そうでない場合は、x<\frac{l}{2}の場合だけでなく、x>=\frac{l}{2}の場合も考えて微分方程式を解いていく必要があります。

伊豆旅行(3日目)~下田市街、魚市場、下田公園あじさい祭り~

6/12(日)晴れ
下田の道の駅『開国しもだみなと』に泊まった翌日の話です。
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4時起床。日の出は4時半なので、辺りはほんのりと明るい程度だが、鳥たちの囀りは、すでに朝が始まっていることを示していた。
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今日は日曜日。日曜日には魚市場が催されるのでとても楽しみだが、8時半からなのでだいぶ先だ。それまで下田市街を散歩することにした。

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波止場には漁船や遊覧船、ボートなどが静かに浮かんでいた。

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海から船を引き上げて修理するためのレールが、緩い傾斜で水中へとのびていた。

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下田市街は格子状の通りに商店街が広がっているが、朝なので皆シャッターが下りていて、街は閑散としていた。

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なまこ壁の建物をよく見かける。黒色の壁に、白くて丸く盛り上がった斜めの格子模様が入っていて、建物全体がまるで網に包まれているかのようで面白い。いかつく、豪快な印象を受けた。

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波止場には、伊豆の踊子の終盤で主人公が旅芸人の一行と別れ、汽船に乗って下田を後にした、汽船乗り場の跡がある。といっても今ではただ碑がたっているだけで、趣はなかった。

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当時の写真(大正時代)を見ると、現在はコンクリで固められている波止場が、石積みで造られており、待合所がなまこ壁だった。

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汽船乗り場跡の辺りには干物屋が集合しており、その何軒かでは斜めに立てかけた四角い網の上にアジや金目鯛の開きを並べ始めていた。

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今日も快晴で暑い。きっと良い干物ができることだろう。8時になったので再び道の駅まで戻る。

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日曜市は想像していたよりも規模が小さく、期待していた分がっかりだった。それよりも面白かったのは、隣の魚市場で漁師たちが見事な金目鯛の山を、水を豪快にかけて洗い、熟練した手さばきで次々と箱に振り分けていく様子だった。

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漁師たちが山を崩し終わると、また新しい金目鯛のカゴを載せた運搬車がやってきて、同じ場面が繰り返される。空になったカゴは、別の者がブラシで軽快にこすり清掃する。一連の作業が興味深くてついつい見入ってしまった。ちなみに下田は金目鯛の水揚げが日本一とのことだ。

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金目鯛を間近で見て、その猫の眼よりも金色に輝く半球形の眼に驚いた。金目鯛と呼ばれる訳がやっと分かった。

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魚市場では食堂で金目鯛の刺身丼を食べた。言い表しようがなく旨かった。

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ペリー上陸の碑まで歩き、そこから下田公園に入った。

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下田公園は、下田城があった山を中心に整備されている。この季節にはアジサイ祭りが開催されていて、顔のようなアジサイがお互いの距離を保ちつつも辺り一面を覆いつくすほどにたくさん咲いていて、とても美しかった。

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6月をこれほど素敵な季節だと感じたのは初めてかもしれない。

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下田公園から下田市街を一望。正面にきれいな三角形の下田富士が見える。

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下田公園の山から下りて、昭和の湯で汗を流した。シャワーはないが400円という格安で入浴できる、貴重な銭湯だと思う。

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それからペリーロードを歩いて下田駅前までやってきた。小川沿いに伸びているペリーロードには、趣のある建物が残っていて、歩いていて楽しい。

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今回の伊豆旅行もいよいよ終盤だ。少し時間を持て余しているので下田富士に登ることにした。下田駅から徒歩3分くらいのところに登山口がある。

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傾斜はきつく、脚が疲労していたため、登るのは一苦労だった。頂上に近づくと、地面というより大きな一つの岩塊を登っているように思えた。


頂上には簡素な社殿があった。周囲は高木で覆われていて、何も見えなかった。ほんの隙間から一部が見えた寝姿山は、女性の横になった姿に似ているからこう呼ばれるのだ、と分かった。


下山。途中で地元の人たちに会って立ち話をした。皆さんご高齢にもかかわらず、ほぼ毎日トレーニングとして登山しているというからすごい。

16時過ぎ、伊豆急行で下田を去る。東京には夜に着いた。孤独な旅行だった。

(完)

木でベッドを作る~その3~(たわみの式の導出)

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前回は、たわみを求める公式y=\frac{P}{4E}\frac{l^3}{h^3w}を使って、ベッドを構成する梁に対して重量計算をしました。重量計算を行う立場から言うと、公式を使えればよく、導出する必要は全くありませんし、理解する必要すらありません。なので、ベッド制作からは完全にわき道にそれるのですが、今回はこの公式を導出してみましょう。

全体的な図

まずはじめに、下図の状況を考えます。
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この図では、中央に、上から力を受けて下に張り出すようにしなっている木材を書きました。右方向がxが正の方向で、上方向がyが正の方向と決めておきます(たわみとして使ったyとは関係ありません)。


ここで木材の中央に点線が書かれていることに注目してください。この点線は、木材が伸びも縮みもしない部分を表しました。下に張り出すようにしなるということは、木材の上の方は圧縮されていて、下の方は逆に引き延ばされているはずです。なので、その真ん中には伸びも縮みもしないところがあるというわけです。


たわみの公式を導出するイメージとしては、y=f(x)の式と書き表してやればいいはずです。

微小な部分に着目

さて、上の図で、木材の微小な一部分を拡大して図示したものが下図です。
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木材は、もともとは長方形A'B'DCだったのですが、たわんだ結果平行四辺形ABDCとなっています。\rhoはこの小片の曲率半径です。つまり、たわみの曲がり具合とちょうど同じ曲がり具合の円の半径です。また、\phiはABとCDのなす微小な角です。


ここで、AB上にある一つの地点Xを考えます(たわんでいないときの同地点をX'とします)。簡単のため、Oのy成分を0とし、Xのy成分をyとします(こう仮定しても以下の議論には支障がないことが確認できます)。このとき、X地点における木材の伸縮度合\epsilon*1は、\epsilon=\frac{XX'}{CA'}=\frac{y\phi}{\rho\phi}=\frac{y}{\rho}です。

フックの公式

木材は一つのバネだと考えることができ、バネに働く力の大きさはばねの伸び(縮み)に比例するというフックの公式をあてはめることができます。つまり、地点Xにおける力*2\sigmaとすると、\sigma=E\epsilonの関係があります*3


フックの公式と、\epsilonとyの関係式から、\sigma=\frac{E}{\rho}yとなります。

応力

さて、これまでのところ、木材のたわみを作り出している原因である上からの力は全く現れていません。その代わりに、木材がたわんだ結果である木材内部に働く力が、応力σとして現れています。つまり、木材をたわませる力の情報は、応力σに込められているというわけです。


さて、上図の微小な四角形をナナメから見たところを思い浮かべます(下図)。
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ABを通る断面をSとしています。S上に矢印を描いたのですが、これはS上の応力をイメージして描きました。


S平面にわたる応力\sigmaの和を考えると、S上で力が釣り合っていることから、0となります。つまり、\int_S{\sigma ds}=0。ここから\int_S{ydy}=0が分かりますが、これはAO=BOを意味しています(=点線は木材の中央を通る)。


次に、S平面にわたる応力によるモーメントの和をMとします。式に翻訳するとM=\int_S{\sigma y}dsですね。ここから、M=\frac{E}{\rho}\int_S{y^2}dsですが、木材の断面に従って決まる量である\int_S{y^2}dsをIとおけば、M=\frac{E}{\rho}I、つまり\frac{1}{\rho}=\frac{M}{EI}となります*4

曲率半径

下に張り出すようにたわんだ木材の曲がり具合をy=f(x)で表すときに、x地点における曲率半径は
\frac{1}{\rho}=\frac{f^{\prime \prime}}{(1+f^{\prime 2})^2}
となることが確認できます。


ですので、前のMと\rhoの関係式と合わせると、微分方程式
\frac{f^{\prime \prime}}{(1+f^{\prime 2})^2}=\frac{M}{EI}
が得られますが、(1+f^{\prime 2})^2はほぼ1ですので(微分方程式を解くために近似をして)、
\frac{d^2y}{dx^2}=\frac{M}{EI}
がたわみの式が満たす微分方程式となります。この微分方程式を解けばy=f(x)が求まるわけですが、その前に断面のモーメントMそして断面から決まるIを具体的に計算しなくてはいけません。

(続く)

*1:歪度といいます

*2:応力といいます

*3:Eはヤング率で、材質に固有の定数です

*4:この式にyが出てこないことが、Oのy成分を0としてよい理由です

木でベッドを作る~その2~(重量計算)

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前回の記事では、ベッド制作に向けての意気込み(?)、条件設定そして大まかなデザインについて書きました。今回は、ベッドのデザインについてもう一歩踏み込んで考えます。具体的には重量計算をすることによって、制作に使用する木材のサイズを決めようと思います。


『重量計算』というのは正しい用語でないのかもしれませんが、「ベッドの上に重りを置いたと仮定したときの、ベッドの床板のたわみ」を計算することを意図しています。


どうしてたわみを計算するのかといえば、木が折れる前にはたわむわけなので、折れてしまうかどうかの一つの目安となるからです。また、たわみの大小が分かれば、使用時のことを想像することが容易になるためです。

ベッド底面のサイズ

重量計算に先立ってベッド底面のサイズについて簡単に述べておきます。ベッドの底面のサイズは敷布団の大きさから決まるのですが、布団を測ると100cm×210cmでしたので、ベッドの底面も大体この大きさになります。


そこでベッドの底面としては、長さ210cmの二本の梁に、長さ100cmの約10本の横板がまるですのこのように渡してある(通気性が悪いとカビが生えてしまいますからね)形だとします。
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ベッドを構成する木材の中で一番曲がってほしくないのは、なんといってもこの210cmの梁です(上図の青色部分)。そこで、まずはこの梁に対して重量計算をしてみましょう。

210cmの梁の重量計算

計算にあたっては問題を簡略化し、梁の両端にはベッドの脚から受ける上向きのみの力が働くとします。また、梁の上には重りが載っており、その下向きの力は梁の中央の一点のみにかかるとします。なお、梁の自重は無視できるとして考えません。梁の長さ、高さ、奥行きをそれぞれl,h,wとします。
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このように簡略化された状況下で、たわみyの計算式は以下になるんだそうです。

y=\frac{P}{4E}\frac{l^3}{h^3w}

  • P[kg]は梁の上に載る重りの重さですが、ここでは余裕をもって人間二人+αということで200kgの重量が載るとします。
  • また、Eはヤング率と呼ばれる材質に固有の定数ですが、ツーバイ材のヤング率をネットで調べてもよくわかりませんでした(サイトによってマチマチなのです)。なので、ここでは90000[kg/cm^2]だとします。

計算結果

いくつかのl,w,hについてたわみyを計算したものが下表です(単位はcm)。

サイズ 長さ(l) 高さ(h) 奥行き(w) たわみ(y)
2×4材 210 8.9 3.8 1.92
2×6材 210 14.0 3.8 0.49
1×4材 210 14.0 1.9 0.99

仮に2×4材を使用すると、たわみは1.9cmです。結構たわみますね…。寝るときに床が曲がっているのが体感できそうです。なんだか危なっかしいですし、最悪折れてしまうかもしれません。


それでは2×6材を使用するとどうなるかというと、たわみは0.49cmです。これでも意外にたわみますが、許容範囲かもしれません。少なくとも折れることはなさそうなので、2×6材で制作しようと思います。

100cmの横板の重量計算

次に100cmの横板について考えます。すのこのように複数の横板が並んでいるため、人が乗った際に一つの横板に全重量がかかることはほぼありません。つまり重量は分散されるので、ここでは重さP[kg]は40kgとします。上と同じ公式で重量計算をすると、たわみは大体0.23cmになります。これなら問題ない範囲でしょう。

サイズ 長さ(l) 高さ(h) 奥行き(w) たわみ(y)
2×4材 100 3.8 8.9 0.23
1×4材 100 1.9 8.9 1.82

ここでちょっと気づいたことですが、120cmの梁のたわみ0.49cmと100cmの横板のたわみ0.23cmを加算した0.72cmが、床板全体のたわみですねー。